競売・公売物件探訪記(in 松戸) ④-3

~公売④-3 松戸の中古マンションに入札しました!

コスモ松戸リバーサイド7階 2LDK ④ー3

1-1 松戸の公売マンションの入札額は?

さて、今回は、3回目です。いよいよ、入札金額を決める本番です。「入札金額の公開」となります。

前回は、物件騰落率、利回り換算、取引事例の相互比較などから、本物件の売出価格は、現状有姿で、¥1,200~1,500万円と判断しました。

ということは、上記金額以上の金額で入札することは、当然のことリスキーとなります。

公売も、我々からすれば、仕入れの一種ですから、仕入れ⇒販売の流れからみれば、自ずと、入札金額が絞られてきます。

周知のように、公売は、売主様に対する金額交渉ではなく、最も高い金額を入札したところが、その物件を取得できるわけですから、実務上は、入札を想定する金額の上限での攻防となります。

この場合の攻防というのは、入札者(主に不動産業者、続いて一般事業者、そして一般消費者でその大多数が構成されます)間の価格のせめぎあいということです。

物件を取得したはいいが、いざ市場で売り出したら、価格が見合わず、1年以上、塩漬けのまま、結果、覚悟の損切となり、赤字計上で処分してしまったでは、何にもなりません。

1-2 市場売却想定価格は? 会社としての利益分は?

ということで、市場での売出想定価格と、自社の利益分を踏まえて、入札価格を決めていきます。

本物件は、前回の記事で記載したように、実際に成約した同タイプ(専有面積・間取りなど)が、¥1,230万円と1,340万円でした。

よって、本物件の市場価格は、1,200~1,300万円台と予断が働きます。

前回の記事で記載していますが、このマンションは、部屋のタイプが3つに分かれ、①67.54㎡では1,580万円と1,870万円、②58.88㎡では1,270万円~1,860万円と幅があります。そして、本物件である③50.04㎡は1,230万円と1,340万円の2件です。

①と②では、価格の設定がしずらいですが、本物件の50.04㎡では、ほぼ1,300万円前後の価格設定ではないかと想定します。

加えて、①と②が3LDKの間取りであるのに対し、本物件は2LDKです、その点、大きな価格の変動はなさそうです。

あとは、入札想定額を元に、経費の支出を検討してみたいと思います。

そうすれば、売出価格との間で想定利益も算出されます。

入札金額を1,000万円に設定し、それぞれ、1,200万円で売った場合と、1,500万円で売った場合の2種類を算出してみました。

1,200万円は繰り返しお話をしたように、順当な相場価格です。対して、1,500万円は本物件に関する上限価格だと思います。

それぞれの利益想定は、1,000万円で入札した場合、110万円相当の経費支出ですから、想定利益としては、1,200万円で売却なら、88万円程の利益、1,500万円で売却なら、380万円程の利益となります。

以上の点からは、物件を取得しても、現状有姿で売る限り、1,200万円では利益はほぼゼロです。

また、もうひとつの問題は、そもそも、1,000万円で入札しても、落札できるかどうかです。

不動産会社や建築業者さんなどは、落札した上でリフォームをし、その上で高値売買のコースを進むと思います。

これらの方々もさすがに1,000万円では落札できないだろうという想定があるでしょうから、この価格以上となるでしょう。

となると、1,000万円では、落札できないだろうという推定になります。

1-3 入札価格の決定と落札後の物件の運用について

1,000万円で入札して、1,200万円で売ることに意味がないわけですから、別のバージョンを考えなくてはいけません。

もう一度、この物件の特性を考えてみると、松戸駅から徒歩8分程、江戸川河川敷も近く、生活、通勤、環境の3つの良好な条件を揃えています。

昭和63年(1988年)築、築後36年目という経年物件であることが、マンション自体の評価を下げているとは思いますが、実住面では申し分ないはずです。

そこで、これまでの経緯やコスト面なども考慮し、本物件を活用する基本線は、自社取得⇒自社保有、一定期間の賃貸での運用、賃貸収入を確定させた後、リフォームをしての転売を考えました。

本物件の賃料相場が月8万円台ですから、年間の額面収入が約100万円、2年間で200万円が第一段階です。

仮に賃貸の方が、この期間で退出すれば、500万円相当をかけて、リノベーションをし、2,000万円前後での売却・転売を予定します。

ということで、自分たちが妥当と考える金額、そして、2年程、賃貸収入を得た後が実質仕入れ価格(1,000万円を想定)として、リノベ後の差益が予定される金額を準備したいと思います。

入札額⇒1,200万円

同じ金額を入れる競合者もあるかと思い、実務上は、1,210万円とします。

1-4 本物件入札から賃貸運営、リフォーム後の転売益を含めた収益構造

①入札額1,200万円
②賃貸収入(2年間) 月額8万円×24ケ月192万円
③入札額-賃貸収入合計1,000万円
④リフォーム・リノベーション費用(予算)500万円
⑤売値原価(③+④)1,500万円
⑥転売価格2,000万円
⑦転売差益(⑥ー⑤)500万円

入札時の競合については、相手のことばかり考えても仕方ありません。

入札する方は、動機づけも、入札後の利用目的も様々なので、それに応じて入札金額が変わってきます。

極端な話し、是非、この物件に自分で住みたいと思い、2,000万円で入札されたら、不動産事業者を始め、誰もその方には勝てない道理となります。

従って、こうした実住の方は視野に置かず、あくまで不動産ビジネスの観点でみていきたいと思います。

その点では、仮に1,500万円で入札し、物件を取得できても、成約事例からみれば、この価格以上で売ることは無理筋になります。

また、1,500万円で入札し、500万円をリノベ費用に回して、2,000万円近辺で売っても、利幅はごく少なくなります。

上記のいずれも、競売に入札する意味がなくなります。

となれば、我々が入札するのが1,200万円、物件自体の損益分岐点が1,500万円なら、落札価格は、1,200万円から1,500万円の間になるでしょう。

図らずも、この価格帯は、本物件が売却を想定される価格帯でもあります。

1,300万円で入札すればという声もありますが、経費が100万円強、リフォームには500万円かけたいですから、そうなると、この価格ではやはり利益が取れません。

1,400万円にも同じことが言えますし、我々が展開する2年間賃貸回しでの実質、入札額の減殺作戦も、1,200万円での入札がいいところです。

リノベ後の売却については、ある程度の利幅を取っておかないと、必ず、2,000万円で売れるという保証はどこにもありません。

売出価格から値下げ要請されるのは、我々不動産業界では、日常茶飯です。

もし、リノベして1,800万円ぐらいで妥結してしまえば、これもまた損益ギリギリで利益以前の段階です。

本物件は駅から至便で、環境もいい物件ですが、経年物件でもあるので、売却に関しては、必ずしも楽観視できません。

その意味で、私たちが想定する入札価格は、1,200万円です

相手があることですから、この価格で落札が出来なければ仕方がありません。

その時はまた、次回の公売・競売の機会を得ればいいだけの話です。

というところで、今回の入札金額は、1,200万円です。

落札の可能性を、自分たちなりに、グラフ化すると、次のようになるのではと考えています。

1,500万円近辺で落札できる可能性は高いですが、実住目的で2,000万円近辺で入札するヒトも皆無とは言えず、1,500万円の落札率は60%にとどめました。

また、私たちの1,200万円では30%の落札率ではないかと思います。

1,000万円は便宜上、記載していますが、実際は、限りなくゼロに近い状況ではないかと思います。

実際の入札は、10万円、1万円刻みでされることが通常ですから、実務上は、もっと細かい金額で、1,200~1,500万円くらいの価格帯に多くの数字が並ぶと思っています。

価格による可能性があるようでないようなのが、公売(競売)だと思っています。

本日はここまでです。

開札日は、1月22日(月)です。

入札の結果は、最短の場合、入札日の翌々日の24日(水)には、東京国税局のHP翌日にはわかるでしょう。

その結果を受け、この物件に関する競売物件探訪記は、最終回として、総括、評価のフィードバックをして、幕にしたいと思います。

コスモ松戸リバーサイド7階が、無事、私たちに落札できるように祈っております。

この記事を書いた人

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宅建物取引士 伊藤 正行

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